「iDeCoの掛金上限が上がるらしいよ」——先日、会社の同僚がランチ中にそう教えてくれた。でも正直、僕の第一声は「へえ、そうなんだ」くらいの温度感だった。というのも僕はこれまで、iDeCoを本気で検討したことがなかったから。理由はシンプルで、原則60歳まで引き出せないから。僕の投資のゴールはフルFIREなのに、老後まで資金がロックされる制度って目的と真逆じゃないか——そう思って、ずっと視界の外に置いていた。
でも「上限が上がる」というニュースを数字で見直したら、僕の中の答えが少し揺れた。今日はその『揺れ』を、憧れの車を数字で買ったときの話とセットで正直に書いてみたい。iDeCoの改正、あなたにとって得なのか損なのか、感情じゃなく電卓で確かめる回です。
上限アップの本質は「確実にプラスになる数字」が増えること
まず元記事の要点を3行で。iDeCoは2026年12月に制度改正が予定されていて、掛金の上限額と加入できる年齢の引き上げが行われる見込み。上限が上がれば、それだけ節税や資産形成の効果も大きくなる——というのがニュースの中身です(りそなグループの解説記事より)。
ここで僕が「無視できないな」と思ったポイントは一つだけ。iDeCoの掛金は全額が所得控除になるという点です。ざっくり言うと、iDeCoに入れたお金の分だけ、その年の「税金のかかる所得」が減る。つまり所得税と住民税が軽くなる。
これって、株や投資信託の値上がり益とは性質がまったく違うんですよね。株のリターンは「上がるかもしれないし下がるかもしれない」不確実な数字。でも所得控除は、その年の掛金に対してほぼ確定で戻ってくる数字。会社員の僕にとって、自分でコントロールできる節税手段って本当に限られている。だからこそ「上限が上がる=確定で戻る枠が増える」というのは、感情を抜きに見ると地味に強い改正なんです。
どれくらい戻るのか。仮に月2万円(年24万円)を掛けた場合の、年間の節税額の概算を置いておきます(所得税+住民税、税率は課税所得の目安。手数料や復興特別所得税は考慮しない概算です)。
- 課税所得195万円以下(税率15%目安)→ 年 約3.6万円
- 課税所得195万〜330万円(税率20%目安)→ 年 約4.8万円
- 課税所得330万〜695万円(税率30%目安)→ 年 約7.2万円
年7万円戻るとしたら、これを「掛金に対する利回り」に置き換えると相当な数字になる。投資の値上がりを待たずに、拠出した瞬間に効いてくる。ここが、僕が「ふーん」から「ちょっと待てよ」に変わった理由です。
僕が「感情で切り捨てていた」ものを、数字で拾い直した話
ここで、なぜ僕が数字にこだわるのか、去年の一番大きい買い物の話をさせてください。iDeCoの判断軸と、根っこがまったく同じだからです。
2025年、僕は憧れだったHonda S2000(2009年式・AP2型)を540万円で買いました。人生で初めて買ってもらったトミカがS2000で、子どもの頃からの夢。普通なら「憧れなんだから勢いで買う」ところですが、僕はそうしなかった。現金一括ではなく、頭金200万円+固定金利1.95%の10年ローンを選んだんです。月々の返済は17,700円(ボーナス時12万円)。
なぜ現金一括にしなかったのか。当時の判断根拠はこうでした。積み立てている投資信託の年平均リターンがローン金利1.95%を上回るなら、手元の現金は投資に残したほうが、トータルで得になる。だからJAバンクのシミュレーションで月々の返済額まで全部数字で詰めて、「憧れの車すら感情で買わず、数字で買い方を決める」と割り切った。この計算の全過程は僕が残クレを選ばなかった理由|金利1.95%マイカーローンの計算に細かく書いています。
で、正直に告白すると——iDeCoに対して僕は、この「数字で見る」を最初サボっていた。「60歳まで引き出せない」という感情的なデメリットだけで、計算する前に切り捨てていたんです。車はあれだけ電卓を叩いたのに、iDeCoは電卓を出す前に「無し」と判断していた。これ、われながら矛盾していたなと反省しました。想定外だったのは、いざ節税額を試算し直したら、感情で切り捨てるには惜しい数字が出てきたこと。
僕の場合
実際に自分の課税所得でiDeCoの節税額をざっくり計算したら、月2万円で年およそ5万〜7万円が戻る計算になった。これは僕のローン金利1.95%どころじゃない「確定リターン」。ただし僕はNISAに700万円積んできた入金力優先派なので、いきなり満額は入れない。『60歳まで凍結されても、生活も入金力も揺らがない金額』の範囲でだけ拠出する、という結論に落ち着いた。憧れの車を数字で買ったのと同じで、iDeCoも数字で“入れ方”を決める、というだけの話です。
もう一つ正直に言うと、iDeCoは万能ではありません。運用商品によっては元本割れもあり得るし、口座管理手数料もかかる。受け取るときの出口の課税ルールも意外と複雑で、ここを軽視すると「入口で節税したのに出口で取られる」ということも起こり得る。この出口の話はiDeCoの出口戦略と10年ルール|FIRE志望の僕がNISA優先な理由で数字を出して整理したので、拠出額を決める前に一度読んでおくと後悔が減ると思います。
明日からできる、iDeCoを数字で判断する手順
じゃあ具体的に何をすればいいか。難しい話は要らなくて、順番はこれだけです。
1. 自分の「課税所得」をざっくり知る。源泉徴収票の「給与所得控除後の金額」から各種控除を引いた額が目安。正確じゃなくていいので、上のざっくり表のどのゾーンに入るか把握する。ここが分からないと節税額は出せません。
2. 「凍結されても困らない月額」を先に決める。iDeCoの最大の弱点は流動性のなさ。だから僕は「戻る節税額」から入るのではなく、「60歳まで動かせなくても生活・投資が回る金額はいくらか」から入るようにしています。ここを先に決めるだけで、入れすぎを防げる。
3. NISAの枠を優先的に埋める前提で、余力の一部だけを回す。僕はやっぱりNISAが主軸で、入金力=積立元本こそ正義だと思っている。いつでも引き出せる自由度はそれ自体が価値。だから順番は「NISA→余力があればiDeCo」。これは人によって逆でもいいけど、FIREや途中でお金が必要になる可能性を重く見るなら、僕はこの順番を推します。
逆に、iDeCoが向かない人もはっきり書いておきます。数年以内に住宅購入や出産・教育費でまとまった現金が要る人、そしてそもそも所得税をほとんど払っていない人(節税メリットが小さい)。この場合は無理にiDeCoを使わず、まず現金と自由度の高いNISAを優先したほうが素直だと思います。制度改正の内容自体もまだ最終確定ではないので、公式の最新情報が固まってから拠出額を見直すのが安全です(年利や節税額の試算はいずれも将来を保証するものではなく、下振れ・制度変更もあり得る前提で見てください)。
今日からできること
- 源泉徴収票を引っ張り出し、自分の課税所得がどのゾーンか5分で確認する
- 「60歳まで動かせなくても困らない月額」を紙に1つ書き出す(まずは月5,000〜10,000円など小さくてOK)
- NISAの年間枠がまだ余っているなら、iDeCoより先にそちらの積立設定を見直す
結局のところ、iDeCoの改正は「使うか使わないか」を雰囲気で決めると損をする類の話です。上限が上がることは、確定で戻る節税枠が増えるチャンスであると同時に、流動性のない資金を増やしすぎる罠にもなる。だからこそ、憧れの車ですら電卓で買い方を決めた僕は、iDeCoも一度ちゃんと自分の数字を叩いてから判断してほしい、と伝えたいです。
筆者のひとこと
正直、iDeCoを長いこと「自分には関係ない制度」として棚に上げていたことを、この記事を書きながら少し恥ずかしく思いました。数字を出すのが面倒で、感情で切り捨てていただけだった。夢だった車はあんなに計算したのに。改正のニュースって、こういう「思い込みの棚卸し」のいいきっかけになる。答えを出すのはこれからだけど、電卓を叩き直せたこと自体が、今回の収穫でした。
※本記事は個人の見解であり、特定商品の推奨ではありません。制度内容は改正前の予定段階の情報を含み、最終的な条件は公式発表をご確認ください。投資は自己責任でお願いします。
この記事を書いた人
しごととお金のラボ 管理人
28歳の組み込みエンジニア。仕送りゼロ・食費月1万円の学生時代からつみたてNISAを始め、資産1,100万円まで積み上げてきました。仮想通貨で10万円全損した失敗も隠さず書いています。派手な儲け話ではなく、「働き続ける不安から逃げるために始めた投資」のリアルを発信中です。
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