証券会社の「NISAおすすめ銘柄10選」みたいな記事、開いたことある人は多いと思う。僕もつい先日、株探の2026年版を読んだ。で、正直な第一印象を書くと「あ、知ってる話がきれいにまとまってるな」だった。上位にオルカンやS&P500がちゃんと並んでいて、信託報酬0.05〜0.06%台という数字を見て「うん、これでいい」と安心もした。実際、僕が積み立てている銘柄そのものだから。
でも同時に、少し引っかかった。10個も並んでいると、昔の自分なら「で、どれが一番儲かるんだ?」って一番派手なやつを探し始めたはずなんだ。ドラッグストアの冷凍野菜で食いつないでいた学生時代の僕は、余裕がないぶん「早く増やしたい」の気持ちが強かった。選択肢が多いほど、焦っている人ほど、手が止まるか、変な方向に走る。今日はそのへんの話を、同じ道を少し先に歩いた立場から書いてみたい。
「おすすめ10選」記事は何を並べていたのか(要点3行)
まず元記事の中身を、僕なりに3行に圧縮する。
- インデックスファンド5本(オルカン、SBI・V・S&P500など、信託報酬0.05〜0.14%台)を「おすすめ」として提示。
- 同じ「おすすめ」枠でアクティブファンド5本(ひふみプラス1.078%、フィデリティ米国優良株1.639%など)も並列で紹介。
- 冒頭に「PR」表記あり=紹介商品の申込みで報酬が発生する場合がある、と明記されている。
ここで僕が注目したのは、コストの桁が違う商品が同じ「おすすめ」というラベルで並んでいる点だ。オルカンの信託報酬は年0.0578%、フィデリティ米国優良株は年1.639%。ざっと30倍近い差がある。信託報酬というのは、僕らが預けているお金から毎年自動で差し引かれる運用の手数料のこと。持っているだけで、静かに、確実に引かれ続ける数字だと思ってもらえればいい。NISA制度そのものの説明は金融庁のページが一次情報として正確なので、制度の細部はそっちを見てほしい。
誤解しないでほしいんだけど、アクティブファンドが詐欺だとか、全部ダメだとか言いたいわけじゃない。中には長期で指数を上回ってきたものもある。ただ「投資を始めたばかりの人に、コスト30倍の商品を同じ棚で見せる」ことのリスクは、書き手側がもう少し丁寧に扱ってもいいんじゃないか、とは思った。読む側がその構造をわかっていないと、キラキラした「おすすめ」の文字だけを拾ってしまうから。
「なんかすごそうな方」に手が伸びる心理は、投資の失敗そのものだった
ここからは僕自身の話。なぜアクティブファンドの並びにこんなに反応するかというと、過去に「平凡より特別っぽい方」に手を伸ばして、思い切り火傷したからだ。
学生のとき、僕は仮想通貨のIPO案件に10万円を突っ込んで、全部溶かした。当時の10万円は、僕にとって食費数か月分の重みがあるお金だった。何が怖いって、飛びついた瞬間の自分は「これは特別なチャンスだ」と本気で信じていたことなんだ。冷静に見れば怪しい話でも、お金に困っていたり、逆に「もっと増やしたい」という欲が出ているときは、判断のフィルターがゆるくなる。人はそういうとき、地味で平凡な選択肢を無意識に軽く見て、なんとなく特別そうな方に引っ張られる。
この「特別っぽい方へ手が伸びる心理」は、アクティブファンドを選ぶときの気持ちと、構造がよく似ていると僕は思っている。もちろんアクティブファンドは合法だし、詐欺とはまったく違う。でも「平凡なインデックスより、プロが厳選してくれるなんかすごそうな方」という無意識の格上げが起きる点は同じなんだ。そして初心者が焦っているとき、その差額(コスト)はほとんど意識されない。
数字にすると差は残酷なほどはっきりする。仮に700万円をNISAで運用していた場合、信託報酬0.0638%なら年間およそ4,466円、1.639%なら年間およそ114,730円が差し引かれる計算になる。同じ700万円を持っているだけで、毎年11万円前後の差。20年、30年と続けば、その差は複利で効いてくる。派手さの対価を、僕らは毎年静かに払わされるわけだ。
僕の場合
10万円を溶かしたあと、僕がたどり着いた答えは拍子抜けするほど地味だった。「オルカンかS&P500を淡々と積んで、あとは入金力で殴る」。それだけ。今も個別株を趣味の範囲で少し持ってはいるけど、資産の軸は完全にインデックスの自動積立に振っている。全損の経験は痛かったけど、おかげで「特別そうな方に手が伸びたら、まず一回止まる」というブレーキが自分に付いた。あの10万円は、そのブレーキの授業料だったと今は思っている。
じゃあ、明日どうすればいいか|10選から2本に絞る手順
結論から言う。10選も要らない。20代で投資を始めるなら、あの上位インデックスの中から1本、多くても2本選べば十分だ。理由は単純で、選択肢が多いほど手が止まるし、比較に消耗するし、その間も時間という最大の武器が減っていくから。僕は投資で一番効くのは商品選びより「早く始めて、入金を止めないこと」だと考えている。この考え方はS&P500どれを選ぶ?商品より入金力が本音でも詳しく書いた。
具体的な絞り方はこう。まず「全世界に広く分散したいか(オルカン)」「米国に集中したいか(S&P500)」のどちらかを1つ決める。ここは正解不正解ではなく好みでいい。次に、信託報酬が0.1%を切っているか確認する。この2ステップで、10選は実質2〜3本まで絞れる。アクティブファンドは、インデックスで土台ができて「あえてコストを払ってでも試したい」と思える段階まで、いったん保留でいい。
試しに、月3万円を年利5%の想定で20年積み立てた場合をざっくり計算してみる(税・手数料は考慮しない概算で、将来のリターンを保証するものではない)。

この試算だと、20年後の到達額はおよそ1,233万円。積み立てた元本が720万円なので、運用益は約513万円という計算になる。ただし相場は一直線に上がるわけじゃなく、途中で2〜3割下がる年も普通にある。年利5%はあくまで長期の平均イメージで、下振れする前提も頭に入れておくべきだ。それでも、この金額を作る主役は「派手な銘柄選び」ではなく「毎月3万円を止めなかったこと」の方だと僕は思っている。
一つ、この記事の考え方が向かない人のケースも正直に書いておく。「自分で企業や運用方針を調べ、指数を上回ることに知的な面白さを感じる人」には、アクティブファンドやコストを払う選択も十分アリだと思う。僕が言っているのは「焦っていて、時間もなくて、まず失敗を避けたい初心者」に限った話だ。全員に同じ答えを押し付けるつもりはない。
今日からできること
- 「おすすめ10選」から、まずオルカンかS&P500のどちらか1つを好みで選ぶ(決めるのにかける時間は10分でいい)。
- 候補の信託報酬が年0.1%以下かだけ確認する。それ以外の細かいスペック比較は今日はしない。
- 金額は無理せず月1万円からでも自動積立を設定し、まず「止めない仕組み」を先に作る。
まとめ
行動指針として整理すると、やることは3つだけだ。①10選を眺めて焦らず、オルカンかS&P500を1本選ぶ。②信託報酬0.1%以下だけをコストの基準にする。③金額の大小より、自動積立を止めない設計を優先する。「一番儲かる派手な正解」を探すより、「余計なコストと変な商品」という地味な不正解を消していく。20代なら、この引き算だけで結果はだいぶ変わってくると僕は思っている。
筆者のひとこと
正直に言うと、あの「おすすめ10選」記事を読んで一番思い出したのは、10万円を溶かした学生時代の自分の顔だった。あのとき誰かが「派手な正解を探すな、地味な不正解を消せ」って一言だけ言ってくれていたら、僕はあの10万円で好きなものを食べられたかもしれない。だからこの記事は、過去の自分に向けた手紙みたいなものだ。届く人に届けばいいなと思う。
※本記事は個人の見解であり、特定の商品を推奨するものではありません。掲載した信託報酬やシミュレーションは執筆時点の概算で、将来の運用成果を保証するものではありません。投資は自己責任でお願いします。
この記事を書いた人
しごととお金のラボ 管理人
28歳の組み込みエンジニア。仕送りゼロ・食費月1万円の学生時代からつみたてNISAを始め、資産1,100万円まで積み上げてきました。仮想通貨で10万円全損した失敗も隠さず書いています。派手な儲け話ではなく、「働き続ける不安から逃げるために始めた投資」のリアルを発信中です。
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