「17.3%」と「4.5%」。最初にこの2つの数字を並べて見たとき、僕はしばらく手が止まった。前者は「今後3カ月以内に転職活動をするつもり」と答えた正社員の割合、後者は「実際に直近で転職活動をした」人の割合だ。つまり、やろうと思っている人の数と、実際に動いている人の数のあいだには、ざっくり4倍近い差がある。
この「思っているのに動いていない」ゾーンに、たぶん昔の僕も、そして今この記事を読んでいる人の多くもいる。今の仕事が少ししんどい。でも辞めるほどではない。動いたほうがいい気もするけど、何から手をつければいいかわからない。その宙ぶらりんの状態こそ、いちばん精神を削る。今日はその「動けないモヤモヤ」を、転職の最新データと、僕自身が逃げ道を二本立てにしている話から掘り下げてみたい。
2026年の転職市場データの要点を整理する
まず事実から。マイナビキャリアリサーチLabが毎月出している中途採用・転職活動の定点調査(2026年4月度)によると、数字はこうなっている。
- 企業の中途採用実施率:45.2%(前月43.6%から増加)
- 正社員の転職活動実施率:4.5%(前月4.1%から増加)
- 今後3カ月以内に転職活動をする予定の割合:17.3%
- 企業の採用担当者の約半数が「正社員の年収は前年より上がった」と回答
- 正社員の約3割が「前年より年収が上がった」と回答。年収が上がった割合が最も高いのは20代
採用する側(45.2%)はしっかり動いていて、しかも年収を上げている企業が半数。一方で、実際に転職活動に踏み出した個人はわずか4.5%。需要は明らかにあるのに、供給側(働く僕ら)の足が止まっている、という構図が見えてくる。
ここで僕が独自に気になったのは、さっきの「予定17.3% vs 実施4.5%」のギャップだ。割り算すると17.3 ÷ 4.5 ≒ 3.8倍。やる気の人が、実際に動く人の約4倍いる。さらに過去の推移を見ると、実施率は2025年5月の3.2%から2026年4月の4.5%へと、1年で1.3ポイントじわじわ上がっている。割合でいえば約4割増だ。世の中の体感としては「みんな同じ会社にしがみついている」イメージだったので、これは正直、僕の肌感とズレていた。水面下では、思っているよりずっと多くの人が選択肢を探し始めている。
僕が転職を「逃げ道その2」として持っている理由
正直に言うと、僕はまだ本格的な転職活動をしたことがない。だからこの記事は「転職して成功した人の武勇伝」ではない。でも、市場価値を測るための準備だけは続けている。なぜそんな中途半端なことをしているのか、という話をしたい。
投資という逃げ道だけだと、心もとなかった
僕が資産形成を始めた動機は「豊かになりたい」ではなく、「社会人を長く続ける自信がない」という恐怖からの逃げ道だった。積立を続けて資産が育っていくと、たしかに気は楽になる。でも投資だけだと「お金が貯まるまであと何年も働き続けないといけない」という現実は変わらない。出口まで遠いのだ。
そこで気づいたのが、転職という選択肢を「逃げ道その2」として持っておくと、心の支えが二本立てになるということ。投資は「いつか降りられる」逃げ道、転職は「今すぐ場所を変えられる」逃げ道。性質が違うから、両方あると安心感が段違いになる。仕事とお金の距離の取り方については仕事とお金のバランスって、結局どっちも大事だった話でも書いたけれど、逃げ道があるからこそ、目の前の仕事と冷静に距離を取れる。
スカウトの提示額を見るだけで、自分の値段がわかる
未経験の領域だからこそ、できることをやっている。具体的には、スカウト型の転職サービスに職務経歴だけ登録して、放置している。応募はしない。ただ、どんなオファーが来るかを「市場の鏡」として眺めているだけだ。
これが思った以上に効く。組み込み・セキュリティ系の経歴で登録しておくと、たまに想定年収レンジ付きのスカウトが届く。中身を見ると「現職と同等〜+50万円くらい」のものもあれば、「条件次第で大きく動きそう」なものもある。具体的な数字で「今の自分はこのくらいの値札がついている」と分かるだけで、職場で多少しんどいことがあっても「最悪、ここを降りても食っていける」と思えて、不思議と気が楽になる。市場価値を測れる状態そのものが、精神安定剤なんだと実感している。
ただし「焦って動く」のだけは絶対に避ける
一つだけ強く言いたいのは、しんどいからといって衝動的に動くのは危険だということ。僕は過去に、お金に余裕がなくて焦っていた時期に、仮想通貨のIPOっぽい話に飛びついて10万円を全損したことがある。後で振り返ると、判断材料はほとんど見ていなくて「今動かないと損する気がする」という焦りだけで決めていた。投資で失敗しない3原則|10万円全損から学んだ本音でも書いたけれど、焦りは判断を確実に鈍らせる。
転職もまったく同じ構造だと思う。「今の仕事がつらい」という負の感情を燃料に動くと、たぶん同じ失敗をする。データは「煽られて動くため」ではなく「冷静に現在地を測るため」に使うべきだ。淡々と数字を見る。それくらいの距離感がちょうどいい。
明日から「動ける準備」を始める具体的な手順
「予定はあるけど動けていない4倍ゾーン」から一歩抜けるために、転職そのものをいきなりやる必要はない。まずは「いつでも動ける状態」を作るところから始めればいい。お金もほとんどかからない、僕がやっている準備を具体的に紹介する。
- 職務経歴の棚卸しを60分だけやる:転職するかどうかは脇に置いて、自分がやってきた仕事を箇条書きで紙1枚に書き出す。所要時間は1時間で十分。これが市場価値を測る土台になる。
- スカウト型サービスに登録だけして放置:応募ボタンは押さない。登録は無料。月に数件届くスカウトの想定年収レンジを「自分の値札」として眺めるだけ。手を動かす時間は初回30分ほど。
- 「動く基準」を先に数字で決めておく:感情ではなく数字で動くために、たとえば「現職+60万円以上、かつ残業が今より減るなら検討」のように、自分の条件を先に決める。感情が高ぶった日に決めないための予防線になる。
- スキルの一手を毎日少しだけ仕込む:僕は毎日英会話を続けている。1日25分でも、続けると「選べる自分」の幅が確実に広がる。これは将来の年収レンジそのものを押し上げる投資だと思っている。
そして年収が上がったら、その差額を生活の膨張に全部使うのではなく、一部を自動で積立に回す仕組みにしておく。年収が上がる局面は、20代がいちばん多いというデータが出ている今こそ、入金力を底上げするチャンスだ。なぜ僕がここまで入金力にこだわるのかは資産形成、入金力こそ正義…だけど一番しんどいのもそこに正直に書いている。
まとめ
2026年の転職市場は、企業の採用実施率45.2%、年収を上げる企業が約半数、年収アップが最も多いのは20代——働く側にとって悪くない地合いだ。一方で、実際に転職活動に動いた人は4.5%で、やる気のある人の約4分の1しか踏み出せていない。だからこそ、いきなり辞める必要はない。職務経歴の棚卸しとスカウト登録という「動ける準備」をしておくだけで、現在地が数字でわかり、目の前の仕事との距離が取れるようになる。転職する/しないは、その後で冷静に決めればいい。数字は嘘をつかない。焦らず、でも準備だけはしておこう。
筆者のひとこと
転職をまだしていない僕が転職データを語るのは、少し気が引ける部分もある。でも「動いていないからこそ見える、動けない人のリアル」もあると思っている。逃げ道は、使うために作るんじゃない。使わなくて済むために作る。スカウトの想定年収を眺めて「まあ、いざとなれば」と思える夜が、僕の今日の心を救っている。それで十分だと思っている。
明日からできる具体的アクション
- 今夜60分:自分の職務経歴を紙1枚に箇条書きで棚卸しする(評価ではなく事実を並べるだけ)。
- 今週中30分:スカウト型サービスに無料登録し、届く想定年収レンジを「自分の値札」として記録する。応募はしない。
- 動く基準を1行で決める:「現職+◯万円以上、かつ◯◯が改善するなら検討」と数字で先に決め、感情が高ぶった日に判断しない。
※本記事は個人の体験と公開データに基づく考察であり、特定の行動を推奨するものではありません。投資は自己責任で、元本保証はなく元本割れのリスクがあります。最終的な判断はご自身でお願いします。

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