「収入が少ないのに、資産形成なんてまだ早いのでは?」——これ、昔の僕がまさに思っていたことだ。仕送りゼロ・奨学金なしで大学院に通っていた頃、食費は月1万円くらい。近くにスーパーがなくて、ドラッグストアの冷凍食品と野菜で食いつないでいた。そんな状態で「投資?正気か?」って自分でもツッコんでいた。
でも今振り返ると、あのカツカツの時期に月1万円でつみたてNISAを回し始めた判断が、今の資産の土台になっている。金額はショボかったけど、時間だけは当時の僕がぶっちぎりで持っていた。だから「20代は早く始めるべき」という話には、体験として深く頷ける。
ただ、ネットの「早く始めよう」という記事を読むたびに、いつも一つだけ引っかかることがある。それは「早さ」だけが独り歩きすると、焦った人がとんでもない方向に走り出す危険があること。僕自身、お金に困っていた時期に変な投資話で10万円を溶かした人間だから、余計にそう思う。今日はそのあたりを、ある記事をきっかけに掘り下げてみたい。
マネイロの記事が言う「20代に資産形成が有利な3つの理由」
今回読んだのは、マネイロメディアの「20代から始める資産形成」という記事だ。ざっくり言うと、20代から始めるべき理由を3つ挙げている。
1つ目は「時間を味方にできる」こと。記事の中で一番グッときたのが、複利効果の比較表だった。25歳から月1万円を年5%で35年間積み立てると約1,108万円になるのに対し、45歳から月2万円(つまり倍額)を15年間積んでも約530万円にしかならない、という比較だ(試算参照:つみたてシミュレーター|金融庁)。入金額を倍にしても、20年という時間の差には勝てない。これはまさに僕が投資で一番大事だと思っていることそのままで、素直に共感した。
2つ目は「リスクを取れる年代だから」。仮に投資で損失を出しても、労働期間が長い20代なら後の収入で挽回できる。30代以降は結婚・住宅・教育費といったライフイベントで自由なお金が減りがち、というのも現実的な指摘だ。
3つ目は「お金の習慣を一生の財産にできる」。給料が入ったら先に貯蓄・投資に回す「先取り貯蓄」の仕組みを若いうちに作れれば、それは一生効いてくる、という話。記事はこのあと「①生活防衛資金の確保 →②先取りの仕組み化 →③少額から積立投資」という3ステップも提示していて、王道として筋が通っていると思う。
全体として、煽りのない、地に足のついた良い記事だ。特に生活防衛資金を投資より先に置いている点は、初心者に一番伝えたい順番なので好感が持てる。
記事が触れていない「早く始める先」の話
ただ、僕がこの記事にあえて足したいのは「早く始めるのは賛成、でも始める先が全てだよ」という一言だ。
結論から言うと、時間を味方にするというのは、裏を返せば「余計なことをせずに待てる仕組み」を早く作るということだと僕は思っている。ここを外すと、「早く始めよう」が「早く一発当てよう」にすり替わる。
なぜそう言い切れるかというと、僕自身がその罠にハマった経験があるからだ。学生時代、コロナ禍の給付金10万円を握りしめていた頃、僕は仮想通貨のIPO(新しいコインの初期販売のようなもの)に飛びついて、その10万円を全額溶かした。理由はシンプルで、お金に余裕がないときほど「これで一発逆転できるかも」という話に手が伸びるからだ。冷静なときなら絶対に近寄らない話でも、焦っていると判断が壊れる。
怖いのは、「早く始めなきゃ」という正しい焦りと、「早く増やさなきゃ」という危ない焦りが、頭の中ではほとんど同じ顔をしていることだ。マネイロの記事のように「時間が武器」と正しく書かれていても、読んだ人の状態次第で、その武器が変な商品への突撃に化けてしまう。
僕の場合
大学院1年のとき、月1万円のつみたてNISA(S&P500)を始めた。食費月1万円の生活で、正直「この1万円を今使いたい」という誘惑は毎月あった。でも積立設定を一度組んでからは、僕の意志の力を一切使わず、口座から勝手に引き落とされていった。逆に、10万円全損した仮想通貨IPOのときは、自分で判断して自分でボタンを押していた。「自動で待つ仕組み」に入れたお金は残り、「自分の判断で当てにいったお金」は消えた——僕の中ではこの対比がすべてだ。
だから僕が今も変えていないのは、NISAで淡々と積み立てる、というただそれだけのやり方だ。入金力こそ正義だと思っているから、服はユニクロだし、日用品はふるさと納税の返礼品で調達している。倹約はするけど、長期で価値があると数字で納得できたものにはお金を出す。去年、子どもの頃からの夢だったオープンカーを買ったときも、「積立の期待リターン>ローン金利」を電卓で確認してから買い方を決めた。感情で走るのは最後だけで、入り口は全部数字だ。
ちなみに、この「月1万円を積み続けるとどうなるか」は過去に詳しく計算している。興味があれば月1万円のNISA積立、20年でいくら増える?実体験も読んでみてほしい。
明日からできる「焦りを暴走させない」3ステップ
ここまでの話を、20代の自分が明日から動ける形に落とし込むと、次のようになる。ポイントは「早さ」と「地味さ」をセットで手に入れることだ。
ステップ1:まず生活防衛資金を分けておく。記事の言う通り、投資より先だ。目安は生活費の3〜6ヶ月分。ここが空っぽのまま投資を始めると、暴落時に一番安いところで売る羽目になる。僕は貧乏学生の頃の「お金がないと判断がおかしくなる」感覚を知っているので、この土台は本当に効くと思っている。
ステップ2:積立を「自動」にする。意志の力を使わない。給料日に自動で引き落とされる設定にしておけば、あとは放置でいい。金額は月1,000円でも1万円でもいい。大事なのは額より、仕組みが回り始めることだ。
ステップ3:手を出す商品を1〜2本に絞る。ここが今日一番言いたいところ。焦りが暴走しやすいのは「銘柄選び」の場面だから、最初から候補を絞っておく。下の表は、僕が「これは危険信号かも」と感じるかどうかの自分用チェックリストだ。焦っているときほど、この基準を紙に書いて見返してほしい。
| チェック項目 | 安心して待てる側 | 危険信号(僕が10万溶かした側) |
|---|---|---|
| 期待リターンの語られ方 | 「年3〜7%くらい」と幅で語る | 「年利◯十%」「必ず」と断定 |
| 値動きの正体 | 数百〜数千社に分散されている | 1つの新規コイン・案件に集中 |
| 始める動機 | 時間をかけて増やしたい | 今の生活の穴を一発で埋めたい |
| 判断のタイミング | 設定後は基本ほったらかし | 毎日値段が気になって眠れない |
右側の列に一つでも当てはまったら、いったん手を止める。これは説教ではなく、10万円を溶かした人間からの実務的な忠告だ。
参考までに、月1万円を年5%で35年間積み立てた場合のイメージがこちら。あくまで手数料・税金を考えない単純計算で、将来を約束するものではないけれど、時間の力の輪郭はつかめると思う。

なお、当たり前の話だけど投資は自己責任であり、本記事は特定の商品を推奨するものではない。ここに書いたのはあくまで僕の考え方と体験談だ。もし途中で相場が思ったより伸びず、35年で1,108万円に届かないシナリオもある。そのときでも「自動で入れ続けた分の元本」は手元に積み上がっているわけで、そこが変な商品との決定的な違いだと僕は思っている。
今日からできること
- 普通預金に生活費3ヶ月分(例:月20万円生活なら60万円)を「投資しない枠」として分ける
- 証券口座で月1,000〜1万円の自動積立を1本、今日設定する(額より仕組み優先)
- 上の危険信号チェックリストをスマホのメモに保存し、新しい儲け話を聞いたら見返す習慣をつける
まとめ
20代の武器は間違いなく時間だ。マネイロの記事が示すように、月1万円を35年積むほうが、月2万円を15年積むより多く残る。入金額の差より、時間の差のほうが効く。この事実は、食費月1万円の貧乏学生だった僕が実際に体験して確かめたことでもある。
ただ、その時間を活かすも殺すも「何に入れるか」で決まる。焦って一発逆転を狙った10万円は消え、焦らず自動で積んだお金は残った。だから僕が昔の自分に伝えたいのは、「早く始めろ」だけじゃなくて、「早く、地味なやつを、自動で始めろ」という一言だ。派手さがないからこそ、時間という武器がまっすぐ効いてくる。
筆者のひとこと
正直、月1万円を積み始めた大学院1年の自分に、今の資産がこうなると教えても信じなかったと思う。あの頃は毎月の1万円が惜しくて仕方なかった。でも、あの惜しかった1万円が一番よく働いてくれている。焦りを暴走させず、地味な仕組みに預けた時間は裏切らない——これは僕が身銭を切って学んだ、数少ない確信だ。
この記事を書いた人
しごととお金のラボ 管理人
28歳の組み込みエンジニア。仕送りゼロ・食費月1万円の学生時代からつみたてNISAを始め、資産1,100万円まで積み上げてきました。仮想通貨で10万円全損した失敗も隠さず書いています。派手な儲け話ではなく、「働き続ける不安から逃げるために始めた投資」のリアルを発信中です。
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