「高値20万ドル、下値7.5万ドル」。ある相場展望の記事を読んでいて、僕の目はこの2つの数字の間でしばらく止まった。20万ドルと7.5万ドル。ざっくり倍以上の開きがある。アナリストとしては誠実な予想なんだと思う。でも正直に言えば、これって「上にも下にも行くかもしれません」と言っているのとそんなに変わらない。読めない世界だからこそ、レンジが広くなる。そういう構造なんだと改めて感じた。
ここで僕がドキッとしたのは、数字そのものじゃない。昔の自分なら、この記事から「20万ドル」という一語だけを切り取って、残りの注意書きを全部すっ飛ばしていただろうな、と想像できてしまったからだ。お金に余裕がないときほど、人は都合のいい上振れの数字に吸い寄せられる。これは精神論じゃなくて、僕自身が実際にやらかした話だ。今日はその話を、価格予想との付き合い方とセットで書いていきたい。
結論を先に言っておくと、僕は2026年もビットコインを資産の主軸にする気はない。でも暗号資産そのものを敵視しているわけでもない。大事なのは「予想」を「約束」と読み違えないこと。その一点に尽きる。
記事の要点:流動性は追い風、でもレンジは広い
まず引用元の整理から。マネックス証券のアナリストが書いた2026年の相場展望で、ビットコインの価格予想レンジを「高値200,000ドル・下値75,000ドル」としていた。この見立ての背景は、ざっくり次のような流れだ。
2025年は第二次トランプ政権1年目の通商政策に振り回され、相場の値動きが荒かった一年。それでも機関投資家や企業のビットコイン購入は着実に進み、ETF経由の資金流入が下支えした。10月には一時12.5万ドル(円換算で当時1,880万円付近)まで上がって最高値を更新する場面もあったが、その後はステーブルコインやDeFi市場のトラブルが重なり、11月には8万ドル台前半まで急落。2025年通年で見ると、AI半導体ブームで堅調だったS&P500や日経平均に対して、暗号資産は劣後した。
そのうえで2026年は「金余り」相場が追い風になる、という見立てだ。FRBは利上げの逆(量的引き締め=QT)を2025年12月で終了し、利下げ局面に入っている。各国でも財政・金融の緩和姿勢が鮮明で、世界全体のお金の量が増える方向。お金がジャブジャブになると、発行上限が2,100万枚で固定されているビットコインは「希少性のある資産」として見直されやすい、というロジックだ。一方で記事はインフレが再燃して利下げが止まれば、2022年のようにリスク資産全体が調整するリスクも明記している。AI半導体ブームについても「ITバブルとは性質が違い、実需に支えられている」と冷静に分析していた。
全体として、煽っていないし根拠も示している。情報として読むぶんにはとても良い記事だと思う。ただ、繰り返しになるが、価格レンジの幅が広い。ここをどう受け取るかで、読者の運命は分かれる。
10万円が消えた夜、僕は「上振れの数字」しか見ていなかった
なぜここまで「数字の読み違え」にこだわるのか。理由はシンプルで、僕自身がそれで10万円を失っているからだ。
コロナ禍の給付金10万円。あのお金で僕は株を始めたのだけど、最初に買ったのは暗号資産じゃなくてコカ・コーラだった。何をやっている会社か自分の言葉で説明できる、その安心感が好きだった。問題はそのあとだ。当時の僕はお金に余裕がなくて「一発で増やしたい」という気持ちに飲まれていて、ある仮想通貨のIPO(新規発行)の話に飛びついた。頭の中にあったのは、誰かが言っていた「数十倍になる」という上振れの数字だけ。リスクの説明も小さな注意書きも、見ていたはずなのに頭に入っていなかった。結果は10万円の全損。手元に残ったのは「お金に困っているとき、人は変な話に飛びつく」という、痛みを伴った教訓だけだった。
その後FXの自動売買でもさらに15万円を溶かした。合わせて25万円。今の僕の資産から見れば小さく見えるかもしれないけど、給付金が丸ごと消えた当時のダメージは、金額以上に大きかった。あの全損のときの「あ、消えた」という感覚を、僕は今でもはっきり覚えている。詳しくは金とビットコインの明暗|僕の暗号資産10万円全損から学ぶ分散術にも書いたけれど、あの経験があるから僕は価格予想の「広いレンジ」を見たとき、まず上ではなく下の数字を見るようになった。
だから今回の記事を見たときも、僕の視線は「20万ドル」じゃなくて「7.5万ドル」のほうに先に行った。もし下値の予想に張り付いたら、自分の入金力(=積み立てに回せるお金)はどれだけ削られるか。そこを先に計算する。昔の僕は逆だった。上の数字に夢を見て、下の数字を見なかった。たった一桁の並びを、どっちから読むか。その違いが、25万円という授業料を払って初めて身についた感覚だ。
もう一つ正直に書いておくと、僕は暗号資産を「絶対ダメ」とは思っていない。発行上限がある仕組みも面白いし、機関投資家のお金が入ってくる流れも事実だ。否定したいのは暗号資産じゃなくて、「予想の数字を、自分の未来の約束だと勘違いした過去の自分」のほうなんだ。
明日からできる、価格予想に飲まれないための3つの行動
では具体的にどうするか。25万円を授業料に払った僕が、今まさにやっていることを3つに絞って書く。実数も添えるので、自分の財布に置き換えて読んでほしい。
- ① 予想レンジは必ず「下の数字」から読む。 今回なら20万ドルではなく7.5万ドル。もし買うとして、そこまで下がっても生活と積立に一切影響しない金額か?を先に自問する。上振れに夢を見る前に、下振れに耐えられるかを確認する順番を固定する。
- ② 暗号資産は「全損して笑える金額」=お遊び枠だけ。 僕の基準は数万円まで。生活防衛資金(僕は現金200万を確保している)と、毎月の積立元本には絶対に手をつけない。お遊び枠とコア資産の口座を分けておくと、気持ちのブレーキが物理的に効く。
- ③ 値動きを追う時間を、入金力を増やす時間に変える。 チャートを1日に何度も見ても1円も増えない。その時間を残業の少ない働き方の見直しや、僕がやっている毎日の英会話みたいな「将来の選択肢を増やす投資」に回したほうが、長期のリターンは大きいと本気で思っている。
そして僕自身の答えは、結局とてもシンプルだ。今もやっている通り、NISAでS&P500を淡々と積み立てるだけ。記事が言う「金融緩和でリスク資産全般が支援される」が本当なら、その追い風はインデックスにも吹くはず。だったら、わざわざ倍以上に開いたレンジの中で一喜一憂しなくても、市場全体に乗っかればいい。この淡々と積むやり方の入り口は新NISAとは|700万積んだ僕が語る始め方の本音にまとめているので、土台づくりから始めたい人はこちらをどうぞ。
誤解しないでほしいのは、これは「ビットコインを買うな」という話ではないということ。お遊び枠の中で楽しむぶんには止めない。僕が伝えたいのは、買う・買わないの前に「数字の読み方の順番」を整えておこう、という一点だ。
まとめ
2026年のビットコイン予想は「高値20万ドル・下値7.5万ドル」。流動性の追い風という根拠は理解できるが、レンジが倍以上に開いている時点で、これは未来の約束ではなく「読めなさ」の表現だと受け取るべきだ。僕は給付金10万円を全損した経験から、こういう予想を見たらまず下の数字から読むようにしている。上振れに夢を見て下振れを見なかった過去の自分への、ささやかな仕返しみたいなものだ。予想を約束と読み違えた瞬間に、人生は変な方向に転がる。冷静に数字の幅を見られる人間でいたい——そう思った夜だった。
筆者のひとこと
正直、20万ドルという数字を見たとき、心の奥がほんの少しザワッとした。お金で苦労した時期があるぶん、上振れの夢に弱い回路は今でも自分の中に残っているんだと思う。でもその回路を「ザワッとしたな」と客観視できるようになったのは、25万円という授業料のおかげだ。痛い経験も、こうして冷静さに変換できるなら無駄じゃなかった、と今は思っている。
※本記事は個人の経験と考えに基づくものです。投資は自己責任であり、価格予想は将来の成果を保証しません。暗号資産・株式は元本割れのリスクがあります。最終的な判断はご自身で行ってください。

コメント