2020年の春、僕は10万円の給付金が振り込まれた口座を眺めながら、「これで人生を変えられるかもしれない」と本気で思っていた。結論から言うと、その10万円は一円も残らず消えた。今日はそんな話から始めたい。
暗号資産(ビットコインみたいな、国が発行していないデジタルのお金)の「価値ってどこから来るの?」というテーマは、僕にとって他人事じゃない。なぜなら、僕自身がその「価値」の正体をよく分からないまま、なけなしのお金を溶かした側の人間だからだ。今回は、教科書的な解説をなぞるだけじゃなく、全損した28歳の組み込みエンジニアが「で、結局どう付き合えばいいのか」を本音で書いていく。
結論:ビットコインの価値は「みんなが信じている」ことそのもの
先に結論を言う。ビットコインの価値の正体は「みんなが価値あると信じているから」という、ちょっと拍子抜けするくらいシンプルな話だ。物理的な裏付けはない。金(ゴールド)みたいに掘り出した実体があるわけでもない。実体はただのデジタルデータで、日本の法律上は「所有権」の対象にすらならない。
それでも1BTCが1,000万円を超える値段で取引されているのは、「明日も誰かが買ってくれる」と多くの人が信じているから。世界で6.5億口座、日本だけでも1,200万口座を超えると言われていて、この「信じている人の数」こそが価格を支えている。
ここで多くの人が「じゃあ円とか株と何が違うの?」と思うはずだ。僕もそうだった。実はこの問いを掘ると、お金そのものの正体が見えてくる。
理由:実は日本円も「信用」で動いている、という気づき
このセクションの要点は「ビットコインの仕組みは、僕らが毎日使っている円と本質的に同じ」ということ。
1万円札を思い浮かべてほしい。あの紙の原価は20円もしない。なのに僕らは「これに1万円の価値がある」と疑わず、コンビニで使う。なぜか。国が税金を円で集めるし、中央銀行が後ろにいるから「信用できる」と全員が思い込んでいるからだ。
もしハイパーインフレが起きて「明日には同じパンが2倍の値段になる」とみんなが感じ始めたら、1万円札の価値はあっという間に崩れる。これは歴史上、何度も起きてきたことだ。つまり円もビットコインも、土台は同じ「信用」という名の幻想の上に乗っている。違うのは、その信用を支えているのが「国家」か「世界中のユーザーの市場」かというだけ。
ビットコイン特有の信用の源「発行上限」
ビットコインが他のデジタル通貨と決定的に違うのは、発行できる総量が2,100万枚と最初から決まっている点だ。すでに約1,980万枚が世に出ていて、2140年頃には全部出尽くす。国の通貨は政府の都合でいくらでも刷れるけど、ビットコインは「これ以上増えない」と数学的に約束されている。
この「増えない」という希少性が、金(ゴールド)に近い「価値の保存手段」として見られる理由になっている。実際、2025年にはアメリカが暗号資産の国家備蓄に関する動きを見せ、ビットコインだけを他のコインと別格の「準備資産」として扱う姿勢を示した。国レベルでも「ビットコインは特別」という空気が生まれつつあるのは事実だ。
……ただ、ここまで読んで「じゃあ買うべきだ」と思ったなら、ちょっと待ってほしい。理屈が魅力的に見えるときほど危ない、というのを僕は身銭を切って学んだ。
具体例:僕が暗号資産で10万円を溶かした、たった一つの理由
このセクションの要点は「仕組みの正しさと、自分が儲けられるかは全く別問題」だということ。
2020年、コロナ禍で配られた給付金10万円。僕はそれを、ある暗号資産の新規発行(IPOみたいなもの)に全額突っ込んだ。当時の僕は学生時代の貧乏が骨身に染みていて、「これで一発逆転できるかも」という焦りがあった。結果は冒頭の通り、10万円は丸ごとゼロになった。
このとき痛感したのは、「お金に困っているときほど、人は変な話に飛びつく」という法則だ。ビットコインの信用の仕組みは正しい。でも、僕が手を出したのはビットコインそのものじゃなく、その熱狂のおまけで湧いてきた得体の知れないコインだった。仕組みを理解した気になっていただけで、何も分かっていなかった。
この経験と、その後のFXでの損失も含めた失敗の全体像は金とビットコインの明暗|僕の暗号資産10万円全損から学ぶ分散術に詳しく書いた。要点だけ言うと、僕が辿り着いた答えは「分散」だ。分散というと難しく聞こえるけど、要は「一つのカゴに全部の卵を入れない」というだけの話。あのとき10万円を5つに割って、その一つだけを実験に使っていたら、僕は今も笑って投資を続けられていたと思う。
実践:暗号資産と「火傷せず」付き合う3つの行動
このセクションの要点は「興味があるなら、ルールを先に決めてから触れ」ということ。僕の全損は、ルールを決めずに勢いで突っ込んだから起きた。明日からできる具体策を3つ置いておく。
- ① 比率は資産全体の5〜10%まで、と数字で線を引く。 例えば僕の個人資産1,100万円のうち、暗号資産に回すなら多くても110万円が上限。生活防衛資金(最低でも生活費の半年分)とは絶対に分ける。給付金10万円を全ツッパした昔の僕への、いちばんのアドバイスがこれだ。
- ② 買うなら「アルトコイン」より仕組みが枯れたビットコインから。 名前を聞いたこともない新しいコインは、僕が溶かしたやつと同じ匂いがする。まずは情報量の多いビットコインで、価格の上下に自分のメンタルが耐えられるか「少額で試運転」する。1万円でいい。
- ③ 学ぶ順番を間違えない。暗号資産の前に、まず土台の知識。 いきなり暗号資産から入ると、僕のように熱狂に飲まれる。お金の勉強の入り口はお金の勉強は何から?元貧乏学生が選ぶ最初の3ステップにまとめた。インデックス投資という地味な土台を作ってから、余力で触るのが安全だ。
「自動で増やす仕組み」を先に作るほうが効く理由
暗号資産で一発を狙う前に、僕が本気でおすすめするのは「退屈な自動積立」を先に組むことだ。手順は4ステップ。
- 1. ネット証券(SBIや楽天など)で口座を開く……スマホで完結、手数料は無料。
- 2. つみたて投資枠でS&P500などの投資信託を選ぶ……世界の優良企業に薄く広く分散される。
- 3. 金額を決める……まずは月1万円でいい。無理は禁物。
- 4. 銀行口座からの自動引落を設定……あとは触らない。これで「考えなくても積み上がる」状態になる。
ここで複利のシミュレーションを一つ。月3万円を年利5%で20年間積み立てると、元本720万円に対して、最終的におよそ1,233万円になる計算だ(差額の約513万円が運用益)。暗号資産で一発逆転を狙うより、この地味な仕組みのほうが、僕の経験上はるかに確実に効く。※利回り5%・期間20年・税金や手数料は考慮しないあくまで一例で、将来を保証するものではない。
もし「インデックスだけじゃ物足りない、配当も欲しい」と感じたら、その出口の考え方は高配当4%株は買い?インデックス民が考える出口戦略も合わせて読んでほしい。土台を作ってから次の一手を考える、という順番がやっぱり大事だ。
まとめ:信用で動くものだからこそ、自分のルールで守る
ビットコインの価値は「信用」でできている。それは円も株も同じだ。だからこそ、信用が崩れれば一瞬でゼロになりうる。この性質を理解せず、焦りだけで給付金10万円を突っ込んだのが、かつての僕だった。
暗号資産は「悪」じゃない。仕組みとしては面白いし、資産の片隅に少し持つのはアリだと今でも思っている。ただ、それは生活と分けて、比率を決めて、土台ができてから。熱狂に乗るんじゃなく、ルールを先に作る。10万円分の授業料を払った僕が、同じ道を歩こうとしている君に渡せる、いちばん正直なバトンだ。
筆者のひとこと
あの10万円が消えた夜、正直すごく落ち込んだ。でも今振り返ると、あの全損があったから「元本を守る投資」に本気で向き合えた。失敗は早いほど安く済む。君がもし今、変な話に手を出しそうになっているなら、この記事がブレーキになれば嬉しい。
※暗号資産や税制などの制度は改正されうるため、最新の公式情報を必ず確認してください。投資は元本割れの可能性があり、本記事は特定の銘柄や手法を推奨するものではありません。最終的な投資判断はご自身の責任で行ってください。

